空爆の日に会いましょう OnlineSee you on the bombing day
三角関係 A LOVE Triangle
 私は、「夢日記」をつけることを、はじめました。
 
 夢日記その1.代官山
 戦争がはじまるのでしょうか、という日に、ひとの家の黄色のソファで就寝。明日ははやいというので、アメリカのビルに飛行機が突っ込んでいる映像を見ながら24時にもう寝る。 全くねむれず、何回も寝返り。うつらうつらしたものの5時(あさ)にはバッチリ目が醒める。 朝日がきれいだなあ。勝手にベランダに出て新聞配達の人とかを見る。 遠くに清掃工場の煙突。 というわけで、全く夢は覚えてない、見てない、あるいは、忘れた。

 
場所―代官山 黄色いソファ/部屋―マンション4F 2K/寝間着―灰色に白い線のTシャツとズボン/就寝―24時00分/起床―5時00分/睡眠時間―5時間/夢―なし/朝食―コンビニのシーチキンおにぎり、ウーロン茶/出来事―ニューヨークでテロ/死者―6人(行方不明者推定6000人)
 

 夢日記その2. 西荻窪
  唯一の親戚であるイトコのT叔父さんと結婚させられそうになる夢を見た。夢の中の結納で、なぜか、チャーハンを食べたような気がする。今まで結婚はすごくステキだと思っていたのに、すごく恐ろしいのでした。 イトコのT叔父さんにはここ4年くらい会っていないなあ。祖母の葬式以来かも。元気にしているかな?
 
 
場所―西荻窪 布団に水色のタオルケット/部屋―アパート3F 1K/寝間着―紺色のワンピース型寝間着(持参)/就寝―3時30分/起床―11時前後/睡眠時間―7時間30分/夢―T叔父と結婚/朝食―パン、目玉 焼き、野菜ジュース(人参)/出来事―米英特殊部隊アフガニスタン潜入/死者―276人(行方不明者推定5219人)
 

 新聞やテレビに「戦争か?!」という文字が躍るたびに、私はひとのウチに押し掛けて、夢を見ます。この状況が果 たして戦争かどうなのかということはさておいて、「戦争か?!」という発言がなされるたび、私は以下の、3つの「ない」を実行する誓いをたてました。
 
 
1.ひとのウチに泊まりに行かなくてはいけない
2.そこでセックスをしてはいけない
3.そのときの夢日記を書かなくてはいけない
 

 「ホームシックレス(夢みたい。)」プロジェクトです。 代官山と西荻窪に泊まりに行きました。ホームレス、セックスレスで。セックスをするかわりに、私は「夢日記」を書くのです。ヒトが死んでいるというのに、私はひとのウチのひとの部屋で、案外ふつうに眠ります。 また、何かが起これば、私はまた、どこかひとのウチに押し掛けて、ゆくでしょう。
 夢と同時に記録する死者の数は、単に報道されている数、です。もし今後、どこかが爆撃され、誰かが死んだとしたら、私はその数を、死者の数に加えます。しかし、この数は、おそらくは、正しくないものとなるでしょう。
 
  S君のこと。
 本当は、米英特殊部隊がアフガニスタンに潜入した日は、二子玉川に住んでいるS君の家に泊めてもらう予定でした。しかし、S君、女が泊まりに来るということで、カノジョとおおもめ。だから、セックスしないってば(そういう問題じゃないか)。S君からは深刻に謝りの電話。
 もし、それでS君カップルが別れたとしたら?
 もし、それで、私が申し訳なさに、自殺したとしたら?
 それに怒って、私の愛人がS君を殺したとしたら?
 そういう風な形で人が死んだとしたら?
 というわけで、あることによってひき起こされた、死の数というのは、曖昧です。
 風が吹けば桶屋が儲かる世の中です。思わぬところで、誰かが死んだり、死んでゆくことになるのでしょう。 そんな時でも、私は、せっせと「夢日記」をつけるのです。
 もし、日本が一緒に爆撃とかをしたりされたりすることになっても、やはり、私は案外ふつうの夢を見て、やはり、みんなも、受験勉強をするかしないかとか、セックスをするかしないかとか、明日の朝ご飯は何にしようかとか、を心配するのでしょうか。
 
 大きな東京地図を買いました。
 泊まりにいった場所に青丸のシールを貼ります。
 私は非常に忘れっぽく、祖父のことも、ほとんど覚えていません。が、なぜか、祖父の葬式のとき、マグロの刺身を食べた場所の記憶だけは鮮明です。おそらくきっと、私は朝ご飯のメニューを考えながら、代官山ではニューヨークを思い、西荻窪ではアフガニスタンを思うこととなるのでしょう。どちらにも、行ったことがないので、知らないけれど。私は、青丸シールをせっせと貼ります。別 に何かを忘れないことだけが、よいことだとも思いませんが。
 
 私は時たまテレビを見ます。
 戦争をして、結局犠牲になるのは、こういった、女や子どもたちなんです。と、キャスター。それは、そのとおりです。
 宗教が、とか、政治がとか、権力がとか。実にごもっともで、巨大な大義名分や、各々の言い分はあるのでしょう。まったく、そのとおりです。
 愛のためとか、自由のためとか、神のためとか、正義のためとか、あまりにロマンチックで、あまりに大きなことが、あるのでしょう。実に、実に、そのとおり。
 
 が、私としては、そんなに壮大なロマンや難しいコトバの説明とは懸け離れた、あまりに小さく、ありふれた夢を見ながら、自分でたてた誓いを思いつつ、ほら、誰かのウチに泊まりに行かなくてはならないなんて、面 倒だし、よく眠れないし、イヤよ。という、非常に小さく身勝手な理由で、「戦争か?!」という状況や、それに伴う、誰かが誰かを殺したり殺されたり、ということに、反対してゆこうと思っています。 きわめて消極的で、個人的で、私自身がひとのカップルを破壊するテロ的プロジェクトといわれてしまえばそれまでですが、私はあいも変わらず、凡庸な夢を見つづけているのです。ウチと夢と戦争との三角関係は続きます。

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